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b)心電図の計測および解析
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心電図の計測は、脳波の計測と同時に行われた。誘導法は標準肢誘導法?(双極誘導;図2.2.3−20参照)により、電極からの信号は脳波計に装備されている生体計測用アンプを介して脳波の計測と同じ計測を行った。心電図の解析に関しては、?酔いの発症過程における心拍の変化の解析、?心拍の変動に関する解析、?心電図波形の乱れに関する解析を行った。

 

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乗り物酔いの発症過程において心拍に変化が起こることは比較的多くの報告例がある。そこで、本研究においても動揺暴露実験時の心電図波形から心拍数の変化を求めた。動揺開始直後から、30秒毎に30秒間に亘って、R−Rの個数を検出し平均心拍数とした。図2.2,3−2日こ平均心拍数の変化を示す、図より、酔いを発症した場合には、安静状態に比べてむしろ平均心拍数は減少する傾向にあり、嘔吐すると平常時の心拍に復帰する傾向が見られる。しかも、心拍数の変動は平常時に比べて小さ目になり、変動率は平常時の約半分となると言う結果を得た。この結果の解釈には医学的知識を必要とするが、「健康な状態においては心臓の動きはカオスに近い状態を保っている。しかし、病気が顕在化した場合には、肝機能を初めとして生体機能を維持するために心臓の動きにreguralityが現れる」という報告もあるので、興味深い結果と言うことができる。また、解析に際して30秒間の平均心拍としたことに問題を含んでいるように思われる。R−R間の時間間隔の逆数を用いて1心拍毎の見かけの心拍を求めることを考えねばならないであろう。
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図2.2.3−22に示されるように、心電図のR−R間の時間間隔を計測し、この時間間隔を図のR−R Intervalとして表し、補間によって滑らかな曲線にあてはめた後、等時間間隔でリサンプリングして得られる時系列データを用いて、心拍のゆらぎのスペクトル解析を行った。得られたゆらぎスペクトルを図2.2.3−22に示される低周波数部分(0.04−0.15Hz)の面積LFと高周波数部分(0.15−0.40Hz)の面積HFに分けると、LFは交感神経系の先進状態を表現し、HFは副交感神経系の先進を表現しているとの報告がある。一般に、交感神経系の尤進状態では食欲低下、気分のふさぎ、嘔吐などの症状を呈し、副交感神経系の先進状態では生あくび、吐き気、生唾等の症状を呈すると言われる。そこで、HF,LF,およびLF/HFの時間的変化を求めて乗り物酔い発症との関連を調べた。
図2.2.3−23に、心電図波形の例および波形から得られる心拍のゆらぎスペクトルの例を示す。具体的には、低周波数成分と高周波数成分を分ける周波数は0.15Hzに固定されるものではないので、0.15Hz付近でスペクトル密度の低くなる位置が用いられる。
以上の解析によって得られたLF,HF,LF/HFの解析例を図2.2.3−24に示す。図中の横軸は計測開始からの時間の経過(分)を表す。0(Start)より左側の点は、実験開始前の閉眼安静、開眼安静状態を表し、30分より左側の点は実験終了直後の開眼安静、閉眼安静状態の結果を表している、図中の□、△、●、○印はそれぞれ、LFの平均パワー、HFの平均パワー、LF/HF、被験者の愁訴による酔いの程度を表している。LF/HFが1を挟んで上下することは、交感神経系と副交感神経系の先進状態が交互に起こっていることを表し、乗り物酔いの発症機序の説明に合致するところであると言われている。

 

 

 

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